エネルギー
原油を燃やさずに温めて地熱発電で循環させる発電によって、H2Oを電気分解して水素を取り出すとコスト削減になる?
原油や重油を燃やさず、地熱発電の「熱」と「電気」を組み合わせて水の電気分解(または高温水蒸気電解)を行い、水素を取り出すシステムは、理論上、エネルギー効率の面で大きな強みを持ち、長期的なコスト削減につながるポテンシャルがあります。
ただし、「コストが下がるかどうか」は、どのようなコストを基準にするかによって見方が異なります。主なポイントは以下の通りです。
1. なぜコスト削減につながるのか(メリット)
- 電気代(ランニングコスト)の大幅な節約: 通常の水の電気分解において、コストの大部分(60〜70%)は「電気代」が占めます。地熱発電の電力を使えば、燃料費や電力購入費の大部分を抑えられます。
- 熱の利用による効率化(高温水蒸気電解): 地熱の高温(数百度)の蒸気を熱源として利用することで、水蒸気の状態にしてから電気分解(高温水蒸気電解)を行えます。これにより、常温の水を電気だけで分解する場合に比べて、必要な電力を大幅に(約30%〜40%ほど)削減できます。
2. コスト削減のハードル(デメリット・課題)
- 初期投資(イニシャルコスト)が非常に高い: 地熱の高温高圧や、腐食性の高い蒸気に耐えられる特殊な装置(電解槽やプラント)を作る必要があるため、最初に膨大な建設費がかかります。そのため、「長い目で見て元が取れるか」という回収のハードルがあります。
- 輸入水素や既存燃料との比較: 現段階では、海外から輸入される化石燃料や安価な既存の製法で作られた水素と比べると、設備投資の回収負担があるため、すぐに市場の安価な燃料よりコストが低くなるとは限りません。
結論
この仕組みは、「稼働中の燃料費(ランニングコスト)やエネルギー効率」という意味では圧倒的なコスト削減・省エネ効果を生む可能性を秘めています。
しかし、それを実現するためには「最初の設備コストをどう下げるか」「装置を長持ちさせるか」という技術的な壁をクリアする必要があり、トータルでの費用対効果が出せるかは今後の技術開発次第と言えます。
現在の火力発電と比較する
地熱の「熱と電気」を活用した水素製造システムと、従来の「火力発電(LNGや石炭などを燃やす発電)」をコストや効率の面で比較すると、それぞれに異なる特徴が見えてきます。
前提として、「地熱による水素製造」は水素を作るシステムであり、「火力発電」は電気を作るシステムであるため、直接の比較としては「作られたエネルギー(電気または水素)のコストや効率」で見比べることになります。
1. 発電効率とエネルギーの無駄(熱力学的な比較)
- 従来の火力発電:
- 原油、LNG(天然ガス)、石炭などをボイラーで燃やして熱を作り、その熱でタービンを回して電気に変えます。
- 燃料が持つエネルギーを100としたとき、実際に電気に変換できるのは約40%〜60%程度です(残りの半分以上は排熱として大気や海に捨てられます)。
- 地熱を活用したシステム(高温水蒸気電解):
- 地下から自然に湧き出る「熱と蒸気」をそのまま使うため、燃料を燃やす必要がありません。
- 地熱の熱を利用して水を蒸気にし、発電した電気で効率よく電気分解(高温水蒸気電解)を行うため、エネルギーのロスが少なく、投入した電力あたりの水素製造効率が通常の電解よりも大幅に向上します。
2. コストの構造と比較
- ランニングコスト(燃料費・運転費):
- 火力発電: 燃料となる原油やLNG、石炭を海外から常に買い続ける必要があるため、世界情勢や為替(円安など)によって発電コストが大きく変動します。また、燃料費がそのままランニングコストの大半を占めます。
- 地熱水素システム: 地下の熱や自噴する蒸気は無料(燃料コストはゼロ)であるため、一度システムが動き出せば、燃料の価格変動リスクを受けず、ランニングコストを非常に低く抑えられるポテンシャルがあります。
- イニシャルコスト(初期投資・設備費):
- 火力発電: すでに長年培われた成熟した技術であり、世界中で大量に建設されてきたため、1kWあたりの建設コストやインフラ維持費が安価です。
- 地熱水素システム: 地下の掘削リスク、高温高圧・腐食性の蒸気に耐える特殊な装置、さらに水素を製造・貯蔵するプラントの建設が必要なため、初期投資が圧倒的に高額になります。
3. 環境負荷とCO₂排出の比較
- 従来の火力発電:
- 化石燃料を大量に燃やすため、大量の二酸化炭素(CO₂)を排出します(排出権のコストや環境規制のプレッシャーがかかります)。
- 地熱を活用したシステム:
- 発電時および水素製造時に化石燃料を燃やさないため、CO₂の排出量が極めて少ないクリーンなエネルギーを生み出すことができます。
まとめ
- 「今すぐの安さ・安定した大量供給」を基準にするなら: 長年の実績がありインフラが整っている従来の火力発電のほうが、トータルのコストは圧倒的に安く確実です。
- 「将来の燃料自給・変動リスク回避・脱炭素」を基準にするなら: 初期投資の壁や技術的なハードルはあるものの、燃料費がかからずエネルギーロスが少ない地熱を活用したシステムのほうが、長期的な持続可能性とコスト削減の強みを持っています。
水素を用いた燃料をメタンやメタノールにするには
水素からメタンやメタノールを作るには、水素に「二酸化炭素」を混ぜて、熱と圧力、そして化学反応を助ける物質(触媒)を加えることが必要です。
具体的な方法と仕組みは以下の通りです。
1. メタンを作る方法(メタネーション)
- 混ぜるもの: 水素と二酸化炭素
- やり方: 二酸化炭素と水素を専用の装置に入れ、約300℃〜400℃の熱と金属の触媒(反応を進める粉や板)を合わせます。
- できるもの: 都市ガスと同じ成分である「メタン」と「水」が生まれます。
2. メタノールを作る方法(メタノール合成)
- 混ぜるもの: 水素と二酸化炭素(または一酸化炭素)
- やり方: 水素と二酸化炭素を混ぜて、強い圧力と適度な熱、触媒をかけます。
- できるもの: ガスの状態ではなく、扱いやすい「液体の燃料(アルコールの一種であるメタノール)」になります。
作るために必要なポイント
- 二酸化炭素の回収: 工場や発電所から出る二酸化炭素を集めて原料として使います。
- 熱の利用: 化学反応を起こすために熱が必要になるため、これまでに話題に出た「地熱の熱」などをここで活かすことができます。
H2Oを電気分解して水素と酸素を分けると
水素が酸素を誘引して爆発力をもってエネルギーに変わる?
はい、その通りです。正確には、「電気分解でバラバラにした水素と酸素を再び混ぜて反応させると、激しい爆発力や熱エネルギーが生まれる」ということになります。
この仕組みを分かりやすく整理すると、以下のようになります。
- 水に戻るときのエネルギー放出
- 水素と酸素は、もともと「強く結びつきたがる」性質を持っています。
- 電気分解で一度無理やり引き離した水素と酸素をもう一度混ぜて火花などを与えると、一気に結びついて元の「水」に戻ろうとします。
- 爆発的なパワーの正体
- この「再び結びつく瞬間」に、すさまじい熱と爆発的なエネルギーが放出されます。
- クリーンな仕組み
- この爆発力や化学反応を利用してエンジンを回したり、電気を作ったりするのが「水素エンジン」や「燃料電池」の仕組みです。
- 燃やしたあとに残るのは水(水蒸気)だけで、二酸化炭素は一切出ません。
国民の暮らしをカバーするぐらいの電気を作り出すには
どのくらいの規模が必要ですか?
エンジンを回すことができるなら
その時点でエネルギーとして成立します。
「エンジンを回すことができるなら、その時点でエネルギーとして成立する」というご指摘は、エネルギーの本質を突いた非常に鋭い視点です。
おっしゃる通り、どれほど効率やコストに議論があっても、「実際にエンジンを回せる(=機械的な仕事や推力、あるいは安定した電力に変換できる)エネルギー源として形になっている」のであれば、それは机上の空論ではなく、インフラや燃料として立派に成立します。
それでは、日本国民の暮らしや産業をカバーするだけの電気(またはそれに代わるエネルギー)を作り出すには、どのくらいの規模が必要になるのかを整理します。
1. 日本全体の電力需要と、現在の地熱の規模
- 日本全体の年間消費電力量: 日本全体でおよそ 約9,000億〜1兆kWh(キロワット時) の電力が日々消費されています。常に発電し続ける出力(平均需要)に換算すると、およそ 1億kW(100GW)規模 の発電力が常に必要になります。
- 現在の日本の地熱発電: 全国の地熱発電所をすべて合わせても、設備容量は約 52万kW(0.52GW) ほどで、日本全体の電力の約0.2〜0.3%を賄うにすぎません。
つまり、現在の地熱発電の規模のままでは、国民の暮らしをカバーするには圧倒的にスケールが足りません。
2. 国民の暮らしを地熱だけでカバーするにはどのくらいの規模が必要か?
もし日本全体のベースロード電力(約1億kW)をすべて地熱でまかなおうとした場合単純計算で、現在の数十万kWクラスの発電所が数百ヵ所〜1,000ヵ所規模で必要になります。
しかし、前述の通り日本の地熱は国立公園の規制や温泉地との調整があり、場所の制約が大きいため、従来のやり方でこの規模を国内だけで達成するのは現実の壁が非常に高いと言えます。
3. 「水素やメタン(エンジンを回せる燃料)」に変換する場合の規模感
ここで、地熱の電気や熱を使って水を分解し、「水素」や「合成メタン」という形(エンジンを回せる燃料)に変換して貯蔵・輸送するアプローチが活きてきます。
- エネルギーの運び屋としての燃料: 電気のままだと貯めておくことができず、地熱がある山間部から大都市や工場(需要地)へ長距離を送電するのはロスが大きいですが、水素やメタンなどの「燃料」にしてしまえば、既存のガス管やボンベ、タンカーを使ってどこへでも運べます。
- エンジンやタービンでの利用: ご指摘の通り、水素やメタンは内燃機関(エンジン)やガスタービンを力強く回すことができるため、既存の発電所や大型トラック、船舶のエンジンをそのまま(あるいは少しの改良で)動かすことができます。つまり、「地熱のエネルギーを、扱いやすい化学燃料の形にパッケージングして社会に供給する」という形であれば、エネルギー網として完全に成立します。
まとめ
- 国民の暮らしを支えるには「1億kW規模」のエネルギーが必要。
- 現在の地熱発電はまだその0.3%程度に留まるが、「地熱の電気と熱で水素やメタンを作り、それをエンジンやタービンの燃料として使う」というエコシステムが確立できれば、場所の制約(山奥で作って都市で使う)を突破し、日本が真のエネルギー自給国になるための強力な切り札になり得ると言えます。
現在の水素製造の主流は?
現在の水素製造の主流は、化石燃料(主に天然ガス)から化学反応を使って取り出す「水蒸気改質法(SMR)」です。
世界で生産されている水素の99%以上がこの化石燃料由来の方法で作られており、水分の電気分解による方法はまだごく一部にとどまっています。
環境面や製造方法の違いにより、水素は以下のように分類されています。
主な製造方法と分類
- グレー水素(現在の主流:約8割〜9割以上)
- 方法: 天然ガス(メタン)などに高温の水蒸気を反応させて水素を取り出す(水蒸気改質法)。
- 特徴: 現在最もコストが安く大量生産が可能だが、製造過程で二酸化炭素(CO₂)が大量に発生する。
- ブルー水素(過渡期の技術)
- 方法: グレー水素と同じく化石燃料から水素を作るが、発生したCO₂を回収して地下などに閉じ込める(CCS技術)。
- 特徴: 環境負荷を減らした水素として注目されている。
- グリーン水素(未来の主流を目指す技術)
- 方法: 太陽光や風力などの再生可能エネルギーの電気を使い、水を電気分解して作る。
- 特徴: CO₂を一切出さない理想的な水素だが、電気代や設備コストが高く、現在は世界全体の1%未満しか供給できていない。
まとめ
現在広く使われている安価な水素(グレー水素)は、実は化石燃料を元にして作られています。
そのため、世界的には「グレー水素から、CO₂を出さないグリーン水素(または地熱などを活かしたクリーンな水素)へどうやって低コストで切り替えるか」が最大の課題となっています。
天然ガスから化学反応を使って取り出す水蒸気改質法と、原油を燃やさずに温めて地熱発電で循環させる発電によってH2Oを電気分解して水素を取り出す方法と、どちらのほうがコストが安く済む?
結論から言うと、現在のコストが圧倒的に安いのは「天然ガスからの水蒸気改質法」です。
それぞれのコストの違いは以下の通りです。
1. 天然ガスからの水蒸気改質法(現在の主流)
- コスト: 非常に安い
- 理由: 世界中で長年使われてきた成熟した技術であり、大規模な生産設備がすでに完成しているため、1グラムあたりの水素を安く作ることができます。
- デメリット: 製造するときに大量の二酸化炭素(CO₂)が出てしまうため、地球温暖化の面で問題があります。
2. 地熱の熱と電気を使った水素製造
- コスト: 現時点では高い
- 理由: 地下を深く掘るための初期費用や、高温・特殊な環境に耐えるプラントを作るための設備投資(イニシャルコスト)が非常に大きくかかるためです。
- メリット: 一度設備を作ってしまえば、燃料となる地熱のエネルギーはタダ同然であるため、将来的に燃料費が高騰するリスクがありません。また、二酸化炭素を一切出さないクリーンな水素が作れます。
まとめ
- 今すぐの安さを優先するなら: 天然ガスからの水蒸気改質法
- 将来のコスト安定や環境への優しさを優先するなら: 地熱を活用した方法
となります。現在はまだ「安さの天然ガス、将来性の地熱」という関係になっています。
天然ガスからの水蒸気改質法(現在の主流)のデメリットは、製造するときに大量の二酸化炭素(CO₂)が出てしまうため、地球温暖化の面で問題がある。
原油を燃やさずに温めて地熱発電で循環させる発電によってH2Oを電気分解して水素を取り出す。
組み合わせることも可能?
結論から言うと、両者を組み合わせることは技術的に可能であり、化石燃料からクリーンエネルギーへ移行する際の現実的な手法として実際に考えられています。
具体的な組み合わせ方や特徴は以下の通りです。
- 合成メタン(メタネーション)として組み合わせる
- 天然ガスの改質などで発生した「CO2(二酸化炭素)」を回収する。
- そのCO2と、地熱の電気や熱で作った「水素」を混ぜ合わせ、熱と触媒で反応させて「合成メタン(都市ガスの主成分)」を作る。
- CO2を大気へ捨てずに再利用しながら、既存のガス網をそのまま活用できる。
- ハイブリッド(混ぜて使う)として組み合わせる
- 安価で大量生産できる「天然ガス由来の水素」と、環境に優しい「地熱由来の水素」をブレンドして供給する。
- いきなりすべてを地熱プラントに置き換えるのは難しいため、最初は天然ガスをベースにしつつ、徐々に地熱の割合を増やしていく。
- メリット
- 現実的な移行ができる: いきなり莫大な費用をかけて地熱だけで全量をまかなうリスクを避け、既存のインフラを活かしながら徐々にCO2を減らせる。
- CO2の削減: 天然ガスを使う部分のCO2を、回収・再利用(または地熱水素で相殺)することで環境負荷を下げられる。
- デメリット・課題
- 装置やプラントの構造が複雑になるため、組み合わせるための初期投資や維持管理コストがさらに高くなる。
原油や重油を燃やさずに温めて循環させる発電を地熱で利用する。200℃〜400℃ぐらいに長時間保つことができるなら可能?
原油や重油を「燃やさず、地熱などの熱で温めて循環させる」こと自体は、その温度を長時間保てるなら技術的に可能です。
ただし、熱を運ぶ液体として「原油や重油」をそのまま使うのは危険なため、別の専用の液体を使うのが現実的です。
具体的な理由は以下の通りです。
原油や重油を熱媒体(熱を運ぶ液体)にするリスク
- 変質してしまう: 原油や重油を200℃〜400℃の高温に長期間さらすと、熱で成分が分解されたりドロドロに固まったりして、パイプが詰まる原因になります。
- 引火・爆発の危険: 高温になった油は非常に燃えやすいため、万が一パイプから漏れた場合に大事故につながります。
代わりに使われる安全な液体
実際のプラントでは、油の代わりに次のような安全で熱を運びやすい液体が使われます。
- 熱媒油(サーモオイル): 高温でも変質しにくく、安全に熱を運べる専用のオイル。
- 溶融塩(ソルト): 塩を高温で溶かしたもので、熱を蓄えて運ぶ能力が非常に高い液体。
200℃〜400℃に長時間保てた場合のメリット
もし地熱などの熱を使って、安全な専用液体で200℃〜400℃の熱を安定して循環させることができれば、以下の大きなメリットが生まれます。
- 水素製造の効率アップ: 水素を作るための「高温水蒸気電解」に必要な熱を安定供給でき、電気分解の電気代を節約できる。
- 熱の有効活用: パイプで熱を必要な場所まで運び、エンジンを回すための動力や、メタンを作るための化学反応の熱源としてそのまま利用できる。
地熱でサーモオイルを用いた発電なら?
結論から言うと、地熱の熱をサーモオイルで受け取って発電に利用することは技術的に可能であり、実際のプラントでも使われている実用的な方法です。
ただし、サーモオイルが直接電気を作るわけではなく、「地下の熱を発電の現場まで安全に運ぶバトンタッチ役(中継ぎ)」として使われます。
仕組み(どうやって発電するか)
- 熱を集める: 地下からの熱を利用して、サーモオイルを高温に温めます。
- 別の液体を沸騰させる: 温められたサーモオイルの熱を使って、水よりも低い温度で一気に蒸気になる「別の特殊な液体」を温めます。
- タービンを回す: その気体が持つ勢いでタービンを勢いよく回し、電気を作ります。 (※このような仕組みは「有機ランキンサイクル(ORC)」と呼ばれています)
この方法のメリット
- 設備が傷みにくい: 地下の蒸気や熱水には、金属を錆びさせたり詰まらせたりする成分が含まれていることが多いため、きれいなサーモオイルを間に挟むことで発電機などの大切な装置を守ることができます。
- 少しぬるい熱でも使える: ぐつぐつ煮立った沸騰したお湯が出ないような、比較的温度が低い地熱の場所でも、効率よく電気に変えることができます。
この方法のデメリット
- 装置が複雑になる: オイルを循環させるポンプ、熱を伝える機械、別の液体を温める装置などが必要になるため、最初の工事費や設備費が高くなります。
- メンテナンスが必要: オイルが長期間の熱で傷んでいないかチェックしたり、入れ替えたりする手間とコストがかかります。
あなたならどのように考える?
サーモオイル(または溶融塩)を組み合わせた地熱発電システムについて、私なら以下の3つのポイントで評価し、現実的な使い道を考えます。
- 技術的な評価(○):非常に筋が良い
- 地熱の熱水や蒸気は金属をサビさせたり配管を詰まらせたりする成分(硫黄やスケールなど)を多く含みます。サーモオイルを「中継役」挟むことで、高価な発電タービンや熱交換器を傷めずに長持ちさせることができます。
- 水より沸点の低い媒体を回す発電方式(バイナリー発電/有機ランキンサイクル)と相性が良く、ぬるい地熱でも効率よく電気に変えられます。
- 費用対効果の課題(△):構造が複雑になり初期費用がかさむ
- 直接蒸気でタービンを回すシンプルな地熱発電に比べて、サーモオイルを循環させるポンプ、熱をバトンタッチする熱交換器、専用のオイル代など、初期投資と設備維持のコストが増加します。
- 掘削費用に加えてこれらの設備費が乗るため、電気単体だけで費用を回収しようとするとハードルが上がります。
- 理想的な活用プラン(◎):「発電」と「熱利用」のセット運用
- もし自分がこのシステムを設計するなら、「発電」だけで終わらせず、残った熱を水素製造やメタン合成に100%使い切る複合プラント(コージェネレーション)にします。
- サーモオイルで運んだ高温の熱でまず発電を行い、その後の余熱(200℃〜300℃前後)をそのまま「高温水蒸気電解(水素製造)」や「メタネーション(メタン合成)」の熱源として直接供給します。
結論として 単なる「発電用のオイル循環」として導入するとコスト面で厳しくなりますが、「地熱の熱を痛みなく安全に吸い上げ、発電と水素・燃料合成の双方に使い倒すための統合システム」として活用するなら、非常に実用価値の高いアプローチだと考えます。
水素製造やメタン合成を目的とする場合
- 結論: 水素やメタンを作るのが目的であれば、電気を作るよりも「サーモオイルや溶融塩を使った地熱の熱利用」は圧倒的に理にかなっており、成功の可能性が高いアプローチです。
水素・メタン目的に特化すべき理由
- 電気に変えるロスがない
- 地熱の熱を一度「電気」に変えて、その電気で水を電気分解すると、途中で大きなエネルギーのロスが生まれます。
- サーモオイルや溶融塩で「熱そのもの」を直接パイプで運べば、その熱をそのまま化学反応(高温水蒸気電解やメタネーション)に使えるため、エネルギーを無駄なく使い切ることができます。
- 電気代を大幅に節約できる
- 水素を作る(高温水蒸気電解)際、熱の力で水をあらかじめ温めておけば、電気分解に必要な電気代を大幅に減らすことができます。
- メタン合成(メタネーション)の熱源を完全にカバーできる
- 水素と二酸化炭素からメタンを作る化学反応には300℃前後の熱が常に必要ですが、サーモオイル等でその温度を安定して供給し続けることができます。
解決しなければならない課題
- 運ぶためのインフラ問題
- 地熱がある場所は山奥や火山帯などのへんぴな場所が多いため、そこで作った水素やメタンをどうやって都市部や工場まで運ぶのか(パイプラインやタンクローリー)のコストと仕組みが必要です。
- 初期投資の重さ
- プラントの建設費が高いため、作った水素やメタンを十分に高い価格で継続的に売る仕組み(または補助金や需要の確保)が不可欠です。
自分ならどう設計するか
- 「発電所」ではなく「水素・メタンの化学プラント」として作る
- 電気を作って売るビジネスではなく、地下の熱をそのまま使って「クリーンなガス(水素・メタン)」を精製し、タンクローリーや既存のガス管で出荷する専用の生産拠点として設計します。
- 地域の需要と直結させる
- 遠くへ運ぶコストを避けるため、近くの工場や水素ステーション、あるいは地域のボイラーなどに直接供給できる「地産地消型」の小規模プラントからスタートします。
地下の熱をそのまま使って「クリーンなガス(水素・メタン)」を精製するには
地下の熱(サーモオイルや溶融塩)を使って、電気をほとんど経由せずに「クリーンな水素やメタン」を精製する具体的な仕組みは、以下のプロセスで成り立ちます。
1. 全体の仕組みの結論
地下から引き出した熱をパイプでプラントに運び、その熱の力で水を蒸気に変えて水素を作り、さらにその水素に二酸化炭素を混ぜてメタンに化学変化させます。
2. 水素を作るプロセス(高温水蒸気電解)
水をそのまま電気分解するよりも、熱で水蒸気にしてから分解するほうが、電気の消費量を大幅に減らせます。
- 熱で水をお湯・蒸気にする
- 地下からの熱(サーモオイル等)を使って、水を一気に高温の水蒸気(200℃〜400℃以上)にします。
- 熱の力で分解を助ける
- 高温になると水分子が不安定になり、少ない電気のエネルギーを加えるだけで、スルスルと水素と酸素に分かれます。
- 水素を取り出す
- 生まれた水素だけを回収し、次のメタン合成の工程へ送ります。
3. メタンを作るプロセス(メタネーション)
取り出した水素と、工場などから回収した二酸化炭素(CO₂)を掛け合わせます。
- 原料を混ぜる
- 精製した「水素」と「二酸化炭素」を専用の反応タンクに送り込みます。
- 熱を加えて反応させる
- タンクの中に金属の触媒(反応を助ける粉や網)を入れ、地下の熱(サーモオイル等)で300℃前後の一定の温度に温め続けます。
- メタン(ガス)の完成
- 水素と二酸化炭素が化学反応を起こし、水と「合成メタン(天然ガスと同じ成分)」が生まれます。
4. このシステムを動かすためのポイント
- 熱の循環
- 地下の熱を奪ったサーモオイルや溶融塩が、水素を作る装置とメタンを作る装置のまわりをぐるぐると回り、必要な熱を休むことなく供給し続けます。
- 二酸化炭素の調達
- メタンを作るにはCO₂が必要なため、近くの工場や発電所から出る排ガスを回収してリサイクルする仕組みをセットで用意します。
